大阪地方裁判所 平成2年(特わ)2691号 判決 1991年8月30日
本籍
大阪市天王寺区空清町二番地の二
住居
同 天王寺区空清町二番一〇号
水道器具製造業
吉本清
昭和六年八月二七日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官本多重夫出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金四六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、肩書住居地で水道器具製造業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和六一年分の総所得金額が九〇二六万六八四〇円であった(別紙修正損益計算書(一)参照)のに、株式の継続取引による雑所得のすべてを除外するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和六二年三月六日、大阪市天王寺区堂ケ芝二丁目一一番二五号所在の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一六九万五三三八円でこれに対する所得税額が八六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和六一年分の正規の所得税額四九二五万四五〇〇円と右申告税額との差額四九二四万五九〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた
第二 昭和六二年分の総所得金額が五二二三万八八二三円であった(別紙修正損益計算書(二)参照)のに、前年分と同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和六三年三月一日、前記天王寺税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一七三万一四四二円でこれに対する所得税額が二五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和六二年分の正規の所得税額二二一七万一〇〇〇円と右申告税額との差額二二一六万八五〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた
第三 昭和六三年分の総所得金額が二億三〇四四万六八三〇円であった(別紙修正損益計算書(三)参照)のに、前年分と同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、平成元年三月一四日、前記天王寺税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一三五万一五九〇円でこれに対する所得税額は源泉徴収税額を控除すると二三万九四九〇円の還付を受けるべきこととなる旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和六三年分の正規の所得税額一億二六六〇万二九〇〇円と右申告税額との差額一億二六八四万二三〇〇円(別紙税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一二通
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 吉本清太郎、吉本節子、吉本美保子(二通)、吉本哲雄(三通)、河田敏明、松窪一則、北岡昭、金光謙次、辰巳清之、藤原正嘉、首藤浩巳、山崎孝三郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 吉本清太郎、吉本節子、河田敏明、松窪一則、北岡昭、金光謙次、松本純治の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の査察官調書一二通
一 大蔵事務官作成の証明書(所得税申告書写しを含む)三通
一 検察事務官作成の電話聴取書
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、かつ各罪につき情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金四六〇〇万円に処し、右罰金を完納できないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 福井一郎)
修正損益計算書(一)
<省略>
修正損益計算書(二)
<省略>
修正損益計算書(三)
<省略>
税額計算書
<省略>